マンション管理費の滞納があると、個人再生手続で住宅資金特別条項を利用できません。
マンション管理費の法的性質
マンションの管理費・修繕積立費は、マンションの管理組合が定める管理規約に基づき、マンションの所有者が負担します。これは、区分所有法7条1項の「他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」、「管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権」に該当します。
したがって、マンション管理費の滞納があると、管理費を立替払いした区分所有者や管理組合は、債務者の区分所有権と建物に備え付けた動産の上に先取特権を有することになります(区分所有法7条1項)。
個人再生で住特条項を利用できない場合
住宅の上に住宅ローン債権または住宅ローン債権の保証会社の求償権について設定された抵当権以外に、民事再生法53条1項の特別の先取特権・質権・抵当権・商事留置権が存在する場合は、住特条項を利用できません(民事再生法198条1項但書)。
住特条項によって、住宅ローンを被担保債権とする抵当権の実行は止められても、他の担保権の実行を止めることはできません。つまり、住特条項を定めたとしても、自宅不動産を失うからです。
マンション管理費の個人再生手続きでの取扱い
マンション管理費の滞納があると、上記のように、管理組合等は債務者に対する管理費を被担保債権として、債務者の区分所有権上に先取特権を有します。
この先取特権は、区分所有権及び建物に備え付けた動産という特定の財産の上に認められるもので、性質上、特別の先取特権と解されています。そして、この先取特権は、共益費用の先取特権(民法306条1項)とみなされ、先取特権を行使して、優先的に弁済を受けることができます。
したがって、マンションの滞納管理費を被担保債権とする先取特権が行使されたら、債務者は住宅を手放さなければなりません。民事再生法53条1項の特別の先取特権に該当するのです。
以上により、マンション管理費の滞納がある場合、住特条項を利用することはできません。
マンション管理費の滞納の解消
マンション管理費の滞納があるが、どうしても、個人再生で住特条項を利用したい場合は、マンション管理費の滞納を解消する必要があります。
ただし、債務者が支払うと他の債権者との間での不均衡が生じ、清算価値に上乗せされるおそれがあります。そのため、親族が代わりに支払うなど第三者が弁済するといった方法でマンション管理費の滞納を解消し、個人再生を申立てることになります。
マンション管理費ではありませんが、親族による第三者弁済の事案として、以下の解決事例を参照
個人再生申立前に親族による援助で自宅不動産の抵当権を抹消し個人再生で自宅不動産を残した事例
法律事務所エソラで扱った個人再生の解決事例の一例を紹介します。 ①依頼者 依頼者は、自営業者兼法人の代表者です。事業のための借入が多額になったことから、債務整理を決意、自宅不動産を残すため、個人再生の申立てを希望されて […]