個人再手続と強制執行

 個人再生手続開始決定前に,給与が差押えられていた場合,個人再生手続きと強制執行の手続きの関係は,次のようになります。

強制執行の中止申立て

 再生手続開始の申立てがあった場合,裁判所は,必要があると認めるときは,申立て又は職権で,再生手続開始決定があるまでの間,再生債権に基づく強制執行の手続きの中止を命じることができます(民事再生法26条1項2号)。

強制執行の当然中止

 再生手続開始決定がなされると,再生債権に基づく強制執行の手続きは,中止されます(民事再生法39条1項)。

強制執行の取消申立て

 再生手続開始決定の前後を問わず,裁判所は,再生債務者の申立て又は職権により,担保を立て又は立てさせないで,中止した強制執行手続きの取消しを命じることができます。

 再生手続開始決定前の場合は,再生債務者の事業の継続のために特に必要があることが要件になります(民事再生法26条3項)。通常の消費者の個人再生手続きでは,認められないでしょう。

 再生手続開始決定後は,再生のために必要があることが要件になります(民事再生法39条2項)。

強制執行の当然失効

 再生計画の認可決定が確定すると,中止されていた強制執行手続きは,当然に効力を失います(民事再生法184条)。

当然中止だけど放置してはいけない

 民事再生法の規定について確認しましたが,再生債務者は,具体的にどうすればいいのでしょうか?裁判所といっても,個人再生手続きと強制執行手続きは,事件が係属している裁判所が異なります(同じ裁判所でも民事部が異なります。)。そのため,ちょとした手間が必要です。

 強制執行手続きが係属している裁判所(執行裁判所といいます。)に,再生手続開始決定書を提出します。この時点で,執行裁判所が再生手続開始決定があったことを認識するので,強制執行手続きは,中止されます。

 執行手続きは,中止されるだけで,差押えの効力は維持されています。そのため,給与を全額受け取れるわけではありません。給与全額を受け取るためには,強制執行手続きを取り消す必要があります。

再生のため必要があると認めるとき

 再生手続開始決定後に,強制執行手続きの取消が認められる要件は,「再生のために必要があると認めるとき」です。支払われている給与の4分の3だけでは,当面の生活ができず,勤務先が支払いを留保している分の支払いを受ける必要があることを具体的に説明することになるでしょう。

当然失効だけど放置しない

 再生計画の認可決定が確定すると,強制執行手続きは,当然失効しますが,執行裁判所に,認可決定が確定したことを報告しなければなりません。認可決定書と認可決定確定証明書を執行裁判所に提出します。

 強制執行手続きが失効すると,中止していた間の給与の支払いを受けることができます。