破産管財人の第三者性に関して,民法177条の物権変動の対抗要件について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁昭和46年7月16日判決

 否認権の関係で破産管財人の第三者性が問題になった事案です。

事案の概要

 破産者は,昭和37年10月破産申立を受け,同38年1月16日破産宣告を受け,上告人が破産管財人に選任された。

 破産者は,A社の設立以来の代表取締役であったが,被上告人は,破産者とA社を連帯債務者として,昭和37年1月29日より同年3月23日までの間に数回にわたって貸し付けた合計900万円の貸金債権を有していた。被上告人は,上記貸金債権の担保として,昭和37年3月23日,破産者からその所有の本件山林持分に抵当権の設定を受けたが,その登記は未了であった。

 破産者は,被上告人に対する債務以外に,A社の銀行借入金合計595万円について連帯保証をし,かつ,補助参加人も借入金につき保証をしていたので,補助参加人の保証債務履行によるA社に対する求償権について保証債務を負担し,その他の債権者に対し,合計600万円以上の借受金債務,連帯保証債務を負担していた。

 これらの債務に対し,破産者の資産としては,本件山林持分が存するだけであった。被上告人は,破産者に対し,本件山林持分を被上告人に売却し,その代金債務を上記貸金債権と対等額において相殺することを求め,破産者がこれに応じたので,昭和37年7月11日頃,破産者との間に代金450万円で本件山林持分の売買契約を締結し,同月13日,売買代金債務と前記貸金債権の損害金ならびに元本の一部とを相殺した。

 その後,破産管財人が上記売買契約について,否認権を行使した。

最高裁の判断

 抵当権の設定を受けた者であっても,その登記を経ない間に設定者が破産宣告を受けた場合には,抵当権設定をもって破産債権者に対抗することができないものと解すべきである。

 未登記抵当権者は,他の破産債権者の弁済を受けることはできないのであって,被担保債権額の如何にかかわらず,目的不動産は,その全価額について破産債権者の共同担保となるものと解すべきものである。

 したがって,破産者が未登記抵当権者たる債権者と通謀して,当該債権者だけに優先的に債権の満足をえさせる意図のもとに,その唯一の資産たる不動産を,売買代金債権と被担保債務とを相殺する約定のもとに債権者に売却した場合には,たとえ売買価格が適正であるとしても,売買は詐害行為として否認権行使の対象となるものと解するを相当とする。