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破産手続における取戻権と離婚に伴う財産分与


破産手続では、離婚に伴う財産分与が問題になることがあります。今回は、取戻権との関係を取上げます。

財産分与と取戻権

 離婚に伴う財産分与請求権について、その履行前に分与義務者に破産手続開始決定がなされた場合、分与権者が破産管財人に対して、その財産について取戻権(破産法62条)を行使することができるか?が問題になります。

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取戻権の詳細は、以下の「破産における取戻権」を参照

破産における取戻権

破産手続における取戻権の概略を解説します。

 離婚に伴う財産分与は、①婚姻中に形成した実質上の共同財産を清算するものです。他に、②分与権者の離婚後の生活の維持という扶養的性質や③慰謝料としての性質も有しています。このように、財産分与請求権に複数の性質があることから上記の問題が生じます。

特定物を財産分与する離婚協議が破産手続開始決定前に成立していた場合

 特定物を財産分与する離婚協議・調停・審判が破産手続開始決定前に成立していた場合、分与権者は、取戻権として、その特定物の引渡しを破産管財人に請求することができます。

 ただし、離婚協議等の成立後、分与権者が第三者対抗要件を具備する前に、破産手続開始決定がなされた場合は、対抗問題が生じると解されています。

金銭を財産分与する離婚協議が破産手続開始決定前に成立していた場合

 この場合、金銭の支払を目的とする財産分与請求権は、破産債権として扱います。分与権者は、取戻権を行使して破産管財人に金銭の支払を請求することはできません。

破産手続開始決定時に財産分与について調停等が進行中の場合

 破産手続開始決定時に、財産分与についての調停・審判が進行中の場合についても触れておきます。

 扶養的要素及び慰謝料としての財産分与については、金銭債権なので、破産債権に該当します。調停・審判が成立していない段階では、範囲・内容が不確定・不明確であり、権利行使することはできません。調停・審判の成立時に、権利行使が可能になり、破産債権が生じたとして債権届出が可能になります。

 共同財産の清算としての財産分与のうち、特定物の分与請求について、取戻権を行使することはできないと解されています。この場合も破産債権として債権届出を行うことになります。


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