債務整理の手続きの中で、破産特有のデメリットはあまり多くありません。資格制限は、破産特有のデメリットの一つといえます。
破産による資格制限
破産手続開始決定がなされると、破産法以外の各種法令により、政策的な見地から公法上・私法上の資格が制限されます。資格が制限されると、復権するまで、その資格を取得したり、仕事に就くことはできません。
公法上の資格
公法上の資格制限としては、以下のものを挙げることができます。
公法上の資格制限の例
弁護士・税理士・司法書士・公認会計士・公証人
警備業者・警備員・生命保険募集人・損害保険代理店
宅地建物取引業者・宅地建物取引士
建設業者・貸金業者
私法上の資格
私法上の資格制限としては、以下のものがあります。
私法上の資格制限
後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人・遺言執行者
取締役
会社の取締役と会社との関係は、委任契約です(会社法330条)。取締役が破産すると、破産手続開始決定により、委任関係は終了します(民法653条2号)。そのため、取締役の地位を当然に失います。しかし、会社法は、破産手続開始決定を受けたことを取締役の欠格事由(会社法331条)としていません。破産手続の終了前に、株主総会で再度、取締役に選任することは可能です。
手続きの選択
資格制限に該当する仕事をしている場合は、破産することで、資格が制限されてしまいます。そのため、破産ではなく、任意整理や個人再生の選択を検討しなければなりません。
たとえば、警備会社に警備員として勤務している人で、警備員以外の業務へ配属ができるかどうか、会社と調整できるかどうかも検討する必要があります。
復権
資格制限は、永久に制限されるわけではありません。復権によって、資格制限は消滅します。復権には、当然復権と申立てによる復権があります。
当然復権
破産法はいくつかの事由を上げています(破産法255条)。その中で、免責許可決定の確定が、最もオーソドックスな事由です。免責許可決定の確定により、何もしなくても復権の効果が発生します。
免責許可決定は、官報公告後、2週間の即時抗告期間が経過(破産法252条3項、10条3項・1項・2号、9条)したことで確定します(民訴法122条、116条1項)。免責許可決定の確定日を確認したことは、これまでありませんが、免責許可決定後,約1か月で復権することになります。
申立てによる復権
破産者が破産債権者全員に対する債務を弁済・免除・消滅時効等により責任を免れた場合、破産者の申立てにより、裁判所が認める復権です(破産法256条)。