破産手続きにおいて、労働債権は財団債権又は優先的破産債権として保護されています(労働債権の破産手続における取扱い参照)。しかし、破産財団が不足していて、労働債権の支払いができないことも少なくありません。そのような場合を想定して、未払賃金立替払制度が存在します。
未払賃金立替払制度とは?
賃金の支払の確保等に関する法律に基づき、独立行政法人労働者健康福祉機構が、事業主について破産手続が開始されるなどして、賃金が支払われないまま退職した労働者の未払賃金を一定の範囲で支払う制度があります。その制度が、未払賃金立替払制度(賃金の支払の確保等に関する法律7条)です。
未払賃金立替払制度を用いる要件
未払賃金立替払制度を利用するための要件は、次のとおりです。
未払賃金立替払制度を利用するための要件
①労働者災害補償保険の適用事業であること
②1年以上にわたって事業活動を行ってきたこと
③労働者として雇用されていた者であること
④事業主について破産手続が開始されるなどしたことにより、その申立て日の6か月前の日から2年以内に退職し未払賃金が残っている者から請求があること
未払賃金立替払の対象となる賃金
未払賃金立替払の対象となる賃金は、退職日の6か月前から労働者健康福祉機構に対する立替払請求日の前日までの間に支払期日が到来している定期賃金と退職手当です。
賞与や解雇予告手当は、対象外です。
この合計額の80%相当額が、労働者健康福祉機構から支払われます。ただし、未払賃金の総額が上限額を超える場合は、上限額の80%相当額になります。また、未払賃金の額が2万円を下回る場合は支払われません。
上限額
上限額は、退職日における労働者の年齢によって、以下のように定められています。
年齢 | 金額 |
30歳未満 | 110万円 |
30歳以上45歳未満 | 220万円 |
45歳以上 | 370万円 |
未払賃金立替払の請求手続
労働者が破産管財人から証明書の交付を受け、証明書と一緒に未払賃金立替払請求権を労働者健康福祉機構に提出する必要があります。未払賃金立替払の請求は、破産手続開始決定日から2年以内に行う必要があります。
なお、破産管財人は、破産申立書・破産手続開始決定書・賃金台帳・未払賃金計算書・退職手当規定・退職手当計算明細一覧表等を労働者健康福祉機構に送付することとされています。