自然人(個人)が破産申立てを行う場合、免責許可決定を得ることを目的になされます。免責に関して、一部免責の可否を取上げます。
一部免責の可否の問題
特定の債権についてのみ免責を認めないことにしたり、すべての債権について一定割合で免責を認めることができるか?が、一部免責の可否の問題です。
下級審の裁判例
破産における免責は、免責を許可するか、又は、不許可にするかのどちらかにするのが通常です。
下級審の裁判例では、免責不許可事由に該当する悪質な負債についてのみ免責不許可としたり、すべての債務について一定割合についてのみ免責を認めるという決定がなされたこともあります。
一部免責の可否
一部免責を肯定する見解は、①免責申立ての一部認容として可能であること、②免責制度の柔軟な運用を重視することを理由にしています。
破産法の改正の際に、一部免責を規定するかどうかが議論されたようです。しかし、結局、規定されることはありませんでした。
このように、①明文の根拠がないこと、②債権者が一部免責となるように破産者に圧力をかけることが予想されること、③一部免責により支払義務が残り、破産者の経済的再生が妨げられること、④一部免責の相当性・公平性を具体的に判断するのが困難であることから、一部免責を否定する見解が有力です。
実際、東京地裁では平成8年以降、大阪地裁では平成6年以降、一部免責を認めた裁判例はないとされています。