破産債権の届出と保証人の求償権の消滅時効


破産債権の届出と保証人の求償権の消滅時効について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成7年3月23日判決

 債権者が、主たる債務者の破産手続において、債権全額の届出をした後、保証人が債権調査期日終了後に、債権全額を弁済した事案です。保証人の求償権の消滅時効が問題になった事案です。

事案の概要

 A信金は、B社に対し、昭和53年2月6日に150万円を利息8.2パーセントの約定で貸し付け、また、C社に対し、昭和54年3月24日に600万円を、同年5月8日に1,000万円をいずれも利息年7.5パーセントの約定でそれぞれ貸し付けた。

 被上告人は、C社及びB社から、被上告人が代位弁済したときは代位弁済額に対する弁済の日の翌日から年14.6パーセントの割合による損害金を支払うとの約定で保証の委託を受け、各貸付日ころ、A信金との間で、本件各社の各貸付金債務を保証する旨の契約をした。

 上告人は被上告人との間で、各貸付日ころ、本件各社の被上告人に対する保証の委託に基づく求償債務について連帯して保証する旨の契約をした。

 その後、本件各社は、いずれも昭和54年に破産宣告を受けた。A信金は、本件各社の各破産手続において、昭和55年1月16日にそれぞれ各貸付金の残金について債権の届出をし、同月24日の各債権調査の期日において異議がなかったので、その旨各債権表に記載された。

 被上告人は、A信金に対し、昭和55年3月6日B社に対する前記貸付金の残元利金45万9,199円を、同年6月26日C社に対する前記600万円の貸付金の残元利金602万8,935円と前記1,000万円の貸付金の残元利金1,041万4,246円を弁済して本件各社に対する各貸付金の元利金を完済し、B社の破産手続において同年3月12日、C社の破産手続において同年7月8日、それぞれ破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をし、その旨債権表に記載された。

最高裁の判断

 最高裁は、求償権の消滅時効は、破産手続終了時まで中断すると判断しました。

 債権者が主たる債務者の破産手続において債権全額の届出をし、債権調査の期日が終了した後、保証人が、債権者に債権全額を弁済した上、破産裁判所に債権の届出をした者の地位を承継した旨の届出名義の変更の申出をしたときには、弁済によって保証人が破産者に対して取得する求償権の消滅時効は、求償権の全部について、届出名義の変更のときから破産手続の終了に至るまで中断すると解するのが相当である。

 保証人は、弁済によって破産者に対して求償権を取得するとともに、債権者の破産者に対する債権を代位により取得するところ、同債権は、求償権を確保することを目的として存在する附従的な権利であるから、保証人がいわば求償権の担保として取得した届出債権につき破産裁判所に対してした届出名義の変更の申出は、求償権の満足を得ようとしてする届出債権の行使であって、求償権について、時効中断効の肯認の基礎とされる権利の行使があったものと評価するのに何らの妨げもないし、また、破産手続に伴う求償権行使の制約を考慮すれば、届出債権額が求償権の額を下回る場合においても、申出をした保証人は、特段の事情のない限り、求償権全部を行使する意思を明らかにしたものとみることができるからである。

 この場合において、届出債権につき債権調査の期日において破産管財人、破産債権者及び破産者に異議がなかったときであっても、求償権の消滅時効の期間は、民法174条の2第1項により10年に変更されるものではないと解するのが相当である。

 旧破産法278条1項により債権表に記載された届出債権が破産者に対し確定判決と同一の効力を有するとされるのは、届出債権につき異議がないことが確認されることによって、債権の存在及び内容が確定されることを根拠とするものであると考えられるところ、債権調査の期日の後に保証人が弁済によって取得した求償権の行使として届出債権の名義変更の申出をしても、求償権の存在及び内容についてはこれを確定すべき手続がとられているとみることができないからである。


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