株式の差押えと破産手続


株式の差押えの破産手続における取扱いを判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成30年4月18日判決

 株券が発行されていない株式の差押えの強制執行手続が、破産手続の開始により、効力を失うか?が問題になった事案です。

事案の概要

 Xは債務者が保有する株券の発行されていない株式に対する差押命令を得た。当該株式について売却命令による売却がなされた後、配当表記載の配当額について配当意義の訴えが提起された。

 そのため、配当額に相当する金銭が供託されたが、供託事由が消滅する前に債務者が破産手続開始決定を受け、破産管財人が執行裁判所に本件の差押命令の取消しを求める旨の上申書を提出した。

 執行裁判所は、本件差押命令に係る強制執行手続が破産法42条2項本文により破産財団に対して効力を失うことを前提に、職権で本件差押命令を取り消す旨の決定をした。

最高裁の判断

 最高裁は、株券の発行されていない株式の差押えの強制執行手続は、破産手続の開始によって、効力を失うと判断しました。

 株券が発行されていない株式に対する強制執行手続において、当該株式につき売却命令による売却後、配当表記載の債権者の配当額について配当意義の訴えが提起されたため、配当額に相当する金銭の供託がなされた場合、供託事由が消滅して供託金の支払委託がされるまでに債務者が破産手続開始決定を受けたときは、当該強制執行手続につき、破産法42条2項本文の適用がある。

 破産法42条2項本文は、破産手続開始決定があった場合、破産債権に基づき破産財団に属する財産に対して既になされている強制執行手続は、破産財団に対してはその効力を失うと規定するところ、破産手続開始決定時、既に強制執行が終了しているときは、同項本文の適用はない。

 株券が発行されていない株式に対する強制執行手続においては、執行裁判所は、当該株式につき売却命令による売却がなされた場合、配当等を実施しなければならない。配当表記載の債権者の配当額について配当意義の訴えが提起されたため配当額に相当する金銭の供託がされた場合、供託事由が消滅したときは、裁判所書記官が供託金について配当等の実施としての支払委託を行うことが予定されているのであって、供託金は支払委託がされるまでは、配当等を受けるべき債権者に帰属していない。強制執行手続は、売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時はもとより、その後も支払委託がされるまでは終了しておらず、それまでの間に債務者が破産手続開始決定を受けたときは、破産法42条2項本文の適用がある。


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