生命保険契約に基づく死亡保険金受取人である破産者の死亡保険金請求権が破産財団に帰属するかどうかについて判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成28年4月28日判決

 破産手続開始決定前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権が破産財団に帰属するかどうかが争われました。

事案の概要

 上告人Y1及びAは,平成24年3月7日,東京地方裁判所に破産手続開始の申立てをした。同裁判所は,同月14日,両名についてそれぞれ破産手続開始の決定をし,被上告人らを破産管財人に選任した。

 上告人Y1及びAの長男であるBは,平成16年に全国労働者共済生活協同組合連合会との間で,被共済者をB,死亡共済金を400万円とする生命共済契約を,また,平成23年に日本生命保険相互会社との間で,被保険者をB,死亡保険金を2000万円とする生命保険契約をそれぞれ締結していたが,平成24年4月25日に死亡した。本件生命共済契約の定めによれば,上記死亡共済金の受取人は上告人Y1及びAとなり,本件生命保険契約では,上記死亡保険金の受取人は上告人Y1に指定されていた。

  上告人Y1は,平成24年5月上旬,上記死亡共済金及び上記死亡保険金の各請求手続をして,同月下旬に合計2400万円を受け取り,このうち1000万円を費消し,同年9月,残金1400万円を被上告人X1の預り金口座に振込送金した。なお,本件金員のうち800万円は,同年6月から上告人Y1の代理人となった弁護士である上告人Y2の助言に基づいて費消されたものであった。

 この訴訟は,被上告人らが,上告人Y1又はAの破産財団に属する上記死亡保険金を費消したとして,破産管財人が不当利得返還請求又は不法行為の損害賠償請求を求めたものです。

最高裁の判断

 最高裁は次のように述べ,死亡保険金請求権が破産財団に帰属すると判断しました。

 第三者のためにする生命保険契約の死亡保険金受取人は,当該契約の成立により,当該契約で定める期間内に被保険者が死亡することを停止条件とする死亡保険金請求権を取得するものと解される。この請求権は,被保険者の死亡前であっても,上記死亡保険金受取人において処分したり,その一般債権者において差押えをしたりすることが可能であると解され,一定の財産的価値を有することは否定できない。

 したがって,破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属すると解するのが相当である。

 本件生命共済契約及び本件生命保険契約はいずれも本件各開始決定前に成立し,本件生命共済契約に係る死亡共済金受取人は上告人Y1及びAであり,本件生命保険契約に係る死亡保険金受取人は上告人Y1であったから,本件保険金等請求権のうち死亡共済金に係るものは本件各破産財団に各2分の1の割合で属し,本件保険金等請求権のうち死亡保険金に係るものは上告人Y1の破産財団に属するといえる。