破産手続における役員責任査定


破産手続における法人の役員の責任を追及する手続の役員責任査定を取上げます。

役員責任査定

 通常、取締役等の法人の役員の責任追及は、役員の善管注意義務違反による損害賠償請求(会社法423条1項・429条1項)といった訴訟手続において行われます。

 破産法では、簡易な手続として、役員の責任に基づく損害賠償請求権の査定の裁判(破産法178条)という制度を設けています。もともとは、民事再生法で導入されていた手続で、破産法にも導入されました。

役員責任査定の申立て

 裁判所は、破産管財人の申立て又は職権により、役員の責任の査定の裁判をすることができます(破産法178条1項)。ここでいう裁判所とは、破産事件が係属している裁判体のことです。

 申立ては、書面で行わなければなりません。申立てに際して、役員の善管注意義務違反等の損害賠償請求権の発生原因となる事実の疎明が必要です(破産法178条2項)。

役員責任査定の審理

 役員責任査定手続は、決定手続で審理されます(破産法179条1項)。ただし、通常の決定手続と異なり、相手方である役員を審尋をしなければなりません(破産法179条2項)。事案によっては、役員から書面によって主張等をさせることもあります。

役員責任査定の裁判

 査定の裁判には理由が付記され、申立てを認容する決定は、裁判書と当事者に送達します(破産法179条3項本文)。申立てを却下・棄却する決定については送達が要求されていません。

 役員責任査定決定は、送達から1か月の不変期間内に異議の訴えが提起されなかったとき又は異議の訴えが却下されたときは、給付を命じる確定判決と同一の効力を有します(破産法181条)。

 却下又は棄却する決定については、既判力等の判決効はありません。したがって、管財人は、別途、役員に対する損害賠償請求訴訟を提起することもできます。

役員責任査定決定に対する異議の訴え

 役員責任査定決定に不服がある当事者は、送達を受けた日から1か月以内に、異議の訴えを提起することができます(破産法180条1項)。異議の訴えは、破産裁判所の専属管轄です(破産法180条2項)。

 異議の訴えは、通常の民事訴訟手続で審理されます。異議の訴えの判決は、①訴えの不適法却下、②役員責任査定決定の認可、③役員責任査定決定の変更、④役員責任査定決定の取消しのいずれかになります(破産法180条4項)。

 ②と③の判決は、判決主文中に給付を命じる文言が含まれていませんが、強制執行については、給付を命じる判決と同一の効力を有して(破産法180条5項)、仮執行宣言を付することができます(破産法180条6項)。


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