法人の破産手続開始の原因(要件)である債務超過を取上げます。
法人の破産手続開始原因
破産法は、法人・個人を問わず、支払不能が破産手続開始原因です。そして、破産手続開始原因の立証を容易にするため、支払停止により、支払不能を法律上推定しています。
支払不能と支払停止については、以下の記事参照
破産手続開始原因である支払不能と支払停止
破産を申立てるには、破産手続開始原因があることが必要です。 破産手続開始原因は、支払不能です。支払停止があると、支払不能であることが推定されます。
法人については、債務超過も破産手続開始原因としています(破産法16条1項)。債務超過が法人の破産手続開始原因となっているのは、有限責任原則下では、法人の財産のみが債権者の引当財産となるからです。
対象となる法人
債務超過が破産手続開始原因となる法人は、存立中の合名会社と合資会社を除く法人です(破産法16条2項)。
合名会社と合資会社には、会社の債務について、無限責任社員が存在します(会社法576条2項・3項)。無限責任社員の財産・信用・労力によって、弁済を続けることが可能なため、法人の債務超過は、破産手続開始原因とはならないのです。
債務超過
債務者が、その債務について、その財産で完済することができない状態を債務超過といいます。債務超過かどうかは、支払不能と異なり、信用や労力等は考慮されません。また、弁済期限が到来していない債務についても考慮されます。
資産の評価
法人の資産をどのように評価するのか?について、3つの見解が主張されています。
(1)法人の清算を前提とする清算価値による
(2)法人の事業継続を前提とする継続事業価値による
(3)(1)と(2)の高い方による
法人の事業が停止している場合は、(2)によることはできず、(1)によることになります。法人の事業が継続している場合は、(3)によると考えられます。
債務の評価
前述のとおり、債務超過の判断には、弁済期が到来しているかどうかに関わりなく、債務を考慮します。なお、非金銭債務は、金額による額面を有していないので、債務超過かどうかの判断には考慮されないと解されています。