破産手続において、労働債権は、一部が財団債権になり、その他は優先的破産債権になります。それでは、未払いの賞与はどのように扱われるのでしょうか?
賞与の破産法上の取扱い
賞与は、通常の賃金のほかに労働者に定期的又は臨時に支払われる報酬です。破産手続開始決定前に締結された労働契約に基づいて発生する使用人の労働債権は、財団債権又は優先的破産債権になります。
詳しくは、以下の「労働債権の破産手続における取扱い」を参照
破産法のいう「給料の請求権」とは、労働の対価として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。賃金・給料・手当・賞与等の名称を問わないと解されています。
したがって、賞与も給料の請求権に含まれます。破産手続開始決定前3か月間に生じた賞与は財団債権に該当し(破産法149条1項)、その他は優先的破産債権に該当します(破産法98条1項)。
破産手続開始決定後に支給日が到来する賞与
賞与の支給日が破産手続開始決定後の場合、賞与は破産手続においてどのように扱われるのでしょうか?①賞与の発生時期と②賞与支給に関する在籍要件が問題になります。
賞与の発生時期
賞与の発生時期について、①支給日発生説と②日々発生説があります。①支給日発生説は、支給日に賞与の全額が発生するという考え方です。②日々発生説は、労務提供に伴って日々賞与が発生するという考え方です。
破産実務では、①支給日発生説によって処理をしています。ただし、賞与の支給日前に退職した場合に、日割り計算で賞与を支給する就業規則や労使慣行が存在する場合は②の日々発生説によって処理することもあります。
したがって、破産手続開始決定後に支給日が到来する賞与は、原則として、財団債権としても優先的破産債権としても扱わないということになります。
在籍要件
賞与の支給に関して、就業規則等で、賞与は支給日に在籍する従業者に支給するという在籍要件が、定められていることが多く見られます。この在籍要件は法律上、有効と解されています。
会社の破産においては、破産申立て直前に全従業員を解雇するのが通常です。破産手続開始決定後に支給日が到来する賞与の場合、在籍要件を満たさないことになります。
したがって、前述の支給日発生説に立っても、日々発生説に立っても、賞与の支給日に在籍要件を満たすことがない場合、賞与は、財団債権としても優先的破産債権としても扱われません。