財団債権を代位弁済した代位弁済者が、破産債権である求償権の満足のために弁済による代位によって取得した原債権を財団債権として行使することができるか?を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁平成23年11月22日判決
従業員らの給料債権を破産会社のために弁済した債権者が、従業員らに代位して、破産会社の破産管財人に対し、破産手続によらずに、本件給料債権の支払を求めることができるか?が争われた事案です。
代位弁済者の求償権自体は、破産債権です。しかしながら、弁済による代位によって財団債権を取得し、行使できるのではないか?が問題になりました。
最高裁の判断
最高裁は、弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権であっても、破産手続によらないで財団債権を行使することができると判断しました。
弁済による代位の制度は、代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を確保するために、法の規定により弁済によって消滅すべきはずの原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその求償権の範囲内で原債権及びその担保権を行使することを認める制度であり、原債権を求償権を確保するための一種の担保として機能させることをその趣旨とするものである。この制度趣旨に鑑みれば、求償権を実体法上行使し得る限り、これを確保するために原債権を行使することができ、求償権の行使が倒産手続による制約を受けるとしても、当該手続における原債権の行使自体が制約されていない以上、原債権の行使が求償権と同様の制約を受けるものではないと解するのが相当である。
弁済による代位により財団債権を取得した者は、同人が破産者に対して取得した求償権が破産債権にすぎない場合であっても、破産手続によらないで上記財団債権を行使することができるというべきである。このように解したとしても、他の破産債権者は、もともと原債権者による上記財団債権の行使を甘受せざるを得ない立場にあったのであるから、不当に不利益を被るということはできない。以上のことは、上記財団債権が労働債権であるとしても何ら異なるものではない。