破産手続における取戻権を取上げます。
取戻権
破産手続開始決定時の破産者の財産は、破産財団となります(破産法34条1項)。破産財団は、破産管財人が管理・処分します(破産法2条14項)。
破産者に帰属しない財産が破産財団にあって、占有権原がない場合に、この財産を取戻す権利が、取戻権です(破産法62条)。
取戻権は、①破産法以外の実体法に基づく一般の取戻権と②破産法に基づく特別の取戻権があります。
一般の取戻権
第三者が破産者に対して、破産手続開始決定前から物権的請求権である返還請求権を有していた場合、破産手続開始決定は、この権利に影響を及ぼしません(破産法62条)。
したがって、第三者は、破産管財人に対して、返還請求権を行使することができます。ただし、破産管財人は第三者性を有しています。したがって、第三者対抗要件を具備していることが必要です。
また、第三者のもとにある財産について、破産管財人が引き渡しを求めた場合に、第三者が引き渡しを拒否するという拒絶権として主張されることもあります。
取戻権の基礎となる実体法上の権利は、所有権が典型です。地上権、永小作権等の用益物権や、転貸人による転借人に対する転貸物返還請求権のような債権の場合もあります。
特別の取戻権
破産法に基づく取戻権が、特別の取戻権です。特別の取戻権(破産法63条・64条)は、以下の3つがあります。
特別の取戻権
(1)運送中の物品の売主の取戻権
(2)問屋の取戻権
(3)代償的取戻権
代償的取戻権
破産者が破産手続開始決定前に、取戻権の目的である財産を譲渡した場合、取戻権者は、反対給付の請求権の移転を請求することができます(破産法64条1項)。
取戻権の目的物が第三者に譲渡された場合、その代金相当額についての損害賠償請求権は、破産債権になります。それでは、取戻権者の保護に欠けるということで、公平の見地から特別の取戻権として、保護を図るものです。
なお、代償的取戻権の行使によっても取戻権者に損失が残る場合は、破産債権として権利行使をすることになります。