破産手続における担保権消滅許可手続を取上げます。
担保権消滅許可手続とは?
破産管財人は、破産財団に帰属する不動産があれば、不動産を売却して、破産財団の増殖を図ります。
不動産に抵当権が設定されている場合、ほとんどがオーバーローンの不動産です。オーバーローン不動産は、そのままでは売却できず、競売手続になると売却価格は低額になります。
実務では、破産管財人が不動産の買主を見つけて、抵当権者と交渉の上、売却代金の一部を破産財団に組入れ、所有権の移転と抵当権の抹消を行っています。
しかしながら、破産財団への組入額で担保権者と合意ができない、後順位担保権者が高額の抹消料を要求してくるといった弊害が生じることがあります。
そこで、このような事態に対処するため、破産管財人の申立てにより、破産財団に帰属する財産について、担保権を消滅させ任意売却を行い、売却代金の一部を破産財団に組入れることが制度上、認められています。その制度が、担保権消滅許可手続です(破産法186条)。
担保権消滅許可手続の手続の概要
担保権消滅許可手続の手続きの概要は、以下のとおりです。
担保権消滅許可手続の申立て
担保権消滅許可手続は、裁判所に対する破産管財人の申立てによって行います(破産法186条1項)。
申立てに際して、担保権の目的である財産、売得金の金額、売却相手、消滅すべき担保権、破産財団への組入額等を記載した書面を提出します(破産法186条3項)。
担保権者の保護
担保権消滅許可手続に異議のある担保権者は、以下の2つの対抗手段を取ることができます。
担保権者の取り得る対抗手段
①担保権を実行したことを証明する書面を裁判所に提出する(破産法187条1項)
②破産管財人に対して、担保権者又は他の者が、管財人の申出た売得金より5%以上高額の買受申出額で担保目的物を買受ける旨の申出をする(破産法188条1項・3項)
①の場合、担保権消滅許可の申立てに対して不許可決定がなされます(破産法189条1項)。
②の場合は、買受を申出た買受希望者に対して売却するとの担保権消滅許可決定がなされます。しかし、売得金は裁判所に全額納付され、担保権者に配当されてしまいます(破産法191条1項)。
担保権消滅許可決定
上記①の場合以外、裁判所は担保権消滅許可決定をしなければなりません(破産法189条1項)。
売得金の納付
担保権消滅許可決定が確定したら、許可された売却相手は、裁判所の定める期限内に売得金等を裁判所に納付しなければなりません(破産法190条1項)。期限内に売得金が納付されれば、担保権は消滅します(破産法190条4項)。期限内に売得金が納付されない場合は、担保権消滅許可決定は取り消されます(破産法190条6項)。
配当の実施
売得金が納付された場合、裁判所は配当表等を作成し、担保権者に配当等を行います(破産法191条1項)。