民事再生手続における否認権の行使に関する最高裁判決を紹介します。
最高裁平成29年11月16日判決
民事再生手続において否認権の行使の要件が問題になった事案です。
具体的には、民事再生法127条3項の無償行為否認について、再生債務者が否認対象行為の時に債務超過であることが必要か?が争われました。
事案の概要
Aは平成26年8月29日、Yとの間で、BのYに対する7億円の借入金を連帯保証する契約を締結した。
平成27年2月18日、Aは再生手続開始の申立てを行い、再生手続開始決定を受けた。
Aの再生手続において、Yが再生債権として上記連帯保証契約に基づく連帯保証債務履行請求権を再生債権として届出たが、その額を0円と査定する決定がなされた。同決定に対し、Yが変更を求める異議の訴えを提起し、再生管財人Xが連帯保証契約の締結について、民事再生法127条3項に基づく否認権の行使をすることができるか?が争われている。
最高裁の判断
最高裁は、以下のように、再生債務者が否認対象行為の時に債務超過であることは、民事再生法127条3項の要件ではないと判断しました。
民事再生法127条3項は、再生債務者が支払停止等があった後又はその前6か月以内にした無償行為等を否認することができると規定しているが、同項は、再生債務者が上記行為の時に債務超過であること又は上記行為により債務超過になることを要件とすることをうかがわせる文言はない。同項の趣旨は、否認対象である債務者の行為が対価を伴わないものであって再生債権者の利益を害する危険が特に顕著であるため、専ら行為の内容及び時期に着目して特殊な否認類型を認めたことにある。
同項所定の要件に加えて、再生債務者が否認対象行為の時に債務超過であること又はその行為により債務超過になることを要するものとすることは、同項の趣旨に沿うとはいい難い。
したがって、再生債務者が無償行為等の時に債務超過であること又はその無償行為等により債務超過になることは、民事再生法127条3項に基づく否認権行使の要件ではない。