会社の代表者が死亡している場合、会社の破産申立ては、どのように行えばいいのでしょうか?
法人代表者の死亡と法人の破産申立て
法人の代表者が死亡してしまうと、当然、死亡した代表者を法人の代表者として、破産申立てをすることはできません。
そもそも、法人の代表者が一人の場合は、代表者が死亡することで、法人の機関決定方法を検討する必要もあります。
ここでは、株式会社の代表者が、破産申立ての機関決定前に死亡したという前提で検討します。
新代表者の選任
会社の代表者を新たに選任することができれば、新代表者を会社の代表者として破産申立てをすることが可能です。まずは、新代表者を選任することができるか?を検討します。
取締役会設置会社の場合
会社法上、取締役会設置会社には取締役が3人以上必要です(会社法331条5項)。会社の代表者が死亡後もなお、取締役が3人以上いれば、取締役会で新たな代表取締役を選任することが可能です(会社法362条2項3号)。
取締役が2人しかいない場合は、株主総会を開き取締役を追加選任する必要があります(会社法329条1項)。なお、裁判所に一時取締役の選任や一時代表取締役選任をしてもらうことも考えられます(会社法346条2項)。
取締役会非設置会社の場合
他に取締役が存在する場合は、当該取締役を代表取締役として会社の破産申立てをすることが考えられます(会社法349条2項)。
他に取締役が存在しない場合は、株主総会を開催して取締役を選任する必要があります。もっとも、中小零細企業の場合、代表者が株式の100%を保有していて、かつ、会社の負債を連帯保証している場合が多く見られます。そのような場合、代表者の相続人が相続放棄をしてしまえば、取締役を選任するための株主総会が開催できなくなります。
新代表者を選任することができない場合
他に取締役が存在していれば、準自己破産により法人の破産申立てをすることが考えられます。
準自己破産で破産の申立てはできます。しかし、法人の代表者が存在しないことに変わりはなく、法人の手続追行者が必要になります。そのため、破産裁判所に対して特別代理人の選任を申立てる必要があります(民訴法35条1項・37条)。
準自己破産以外の方法としては、債権者に法人破産申立てを行ってもらうことが考えられます(破産法18条1項)。
債権者申立ては、自己破産・準自己破産と比べて予納金が高額になります。債権者がその費用をかけてまで破産申立てをしてくれるか?という問題があります。特別代理人の選任が必要なのは、準自己破産と同様です。