債権譲渡の第三者対抗要件と破産管財人との関係を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和58年3月22日判決
破産者から破産手続開始決定前に、指名債権を譲り受けた者が、債権の譲受を破産管財人に主張するには、民法467条2項の対抗要件を具備することが必要か?が争点になりました。
事案の概要
上告人は、昭和53年3月8日A社との間において、同社が営業を継続しない決議をしたとき、事実上営業をやめたとき、又は上告人と同社との取引関係の終了することが明らかとなったときを停止条件として、同社が第三者に対して現に有する売掛代金債権及び将来取得することのあるべき売掛代金債権を上告人が譲り受ける旨の債権譲渡契約を締結していた。昭和55年10月4日停止条件が成就し、債権譲渡の効力を生じた。
A社は、同月6日までに、被上告人B社に対し100万3,300円、同C社に対し44万4,566円、同D社に対し18万0,680円、同Eに対し120万0,500円の各売掛代金債権を取得していたから、上告人は、本件各売掛債権を譲り受けた。
A社の名で、同月4日ころ被上告人4名各自に対し、本件各売掛債権を上告人に譲渡した旨の記載のある債権譲渡通知書が簡易書留郵便で送付され、本件各通知書は同月6日ころ被上告人4名にそれぞれ到達したが、本件各通知書には確定日付があるとはいえない。
A社は、同月15日午前10時大阪地方裁判所において破産宣告を受け、破産管財人が選任された。
最高裁の判断
最高裁は、以下のように、対抗要件を具備する必要があると判断しました。
指名債権の譲渡を受けた者は、譲渡人が破産宣告を受けた場合には、破産宣告前に譲渡について民法467条2項所定の対抗要件を具備しない限り、債権の譲受をもつて破産管財人に対抗しえないものと解すべきである。
本件の事実関係のもとにおいては、上告人は、本件各売掛債権の譲受をもって、被上告人破産管財人に対抗しえないものというべきである。