破産手続で免責されない非免責債権を取上げます。
非免責債権
個人が債務整理の手続きの中で破産を選択する場合、その目的は、免責許可決定(破産法252条1項)を得て、債務の支払を免れることです(破産法253条1項本文)。
しかし、破産法には、破産手続きによって、免責されない債権を規定しています(破産法253条1項但書)。これを非免責債権といいます。
もっとも、ある債権が非免責債権かどうか?は、破産事件が係属している裁判所は判断しません。その後、債権者が債務者に対して、債務の支払いを求める訴訟を提起すれば、その訴訟の中で、判断されます。
①租税等の請求権
国庫等の収入を図る趣旨で非免責債権となっています。非免責債権となるのは、租税や社会保険料のうち、財団債権以外のものです。
②破産者が悪意で加えた不法行為による損害賠償請求権
加害者に対する制裁、被害者の救済の趣旨から非免責債権とされています。悪意とは、単なる故意ではなく、他人を害する積極的な意欲のことをいうと解されています。
債務超過を認識した上で、クレジットカードを利用して商品を購入したり飲食することも悪意で加えた不法行為になるとの判決が存在します(最高裁平成12年1月28日判決など)。
③故意または重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
人の生命・身体の法益の重大性から非免責債権とされています。
④親族関係に基づく請求権
要保護性が高く、生存権・幸福追求権の具体化と解され、免責することがモラルハザードにつながるので、非免責債権とされています。
具体的には、次の5つです。
非免責債権となる親族関係に基づく請求権
①夫婦間の協力・扶助義務
②婚姻費用の分担義務
③子の養育費
④親族間の扶養義務
⑤これらに類似する義務で契約に基づく義務として生じるもの
なお、離婚に伴う財産分与請求権は、すべて免責の対象となると解されています。
⑤雇用関係に基づく使用人の請求権、使用人の預り金返還請求権
使用人の保護のために非免責債権とされています。雇用関係に基づく使用人の請求権のうち、財団債権以外のものが非免責債権になります。
⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権
債権者が免責について、意見申述を述べる機会を奪われることから非免責債権とされています。破産者が、過失によって債権者名簿に記載しなかった場合も含まれると解されています。
⑦罰金等の請求権
刑罰等については、本人に負担させるべきなので非免責債権とされています。罰金・科料・刑事訴訟費用・過料・追徴金が該当します。