破産申立をどの裁判所に行うのか?という、実務上、重要な破産事件の管轄を取り上げます。
破産事件の管轄
管轄とは、どこの裁判所に申立てを行うのか?という問題です。管轄には、①事物管轄と②土地管轄の2種類があります。
破産事件は、地方裁判所に申立てる必要があります(破産法5条)。これは、①事物管轄です。
どこの地方裁判所に申立てるのか?というのが②土地管轄の問題です。
破産法は、①原則的な管轄と②一定の関係にある債務者が同時に破産を申立てをする場合の管轄を定めています。また、③大規模な破産事件について迅速かつ適正な事件処理を行うための特則も定められています。
破産事件の原則的土地管轄
破産事件の原則的な土地管轄は、次のとおりです(破産法5条1項)。
破産事件の土地管轄
(1)債務者が営業者:主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所
(2)債務者が営業者で外国に主たる営業所がある:日本における主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所
(3)債務者が営業者ではない又は営業所を有しない:債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所
主たる営業所とは、通常、登記上の本店所在地のことです。登記上の本店所在地と実際の本社機能を有する本店が一致しない場合は、実質上の本店所在地が主たる営業所になります。
具体例
破産の管轄の具体例①
債務者は、会社員で大阪市内の自宅に居住している。
上記の場合、破産申立ては、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する大阪地裁に行います。
破産の管轄の具体例②
債務者は、大阪市内の自宅に居住しているが、京都市内で事務所を構えて自営業を営んでいる。
上記の場合、破産申立ては、主たる営業所の所在地である京都地裁に行う必要があります。大阪地裁ではありません。
補充的土地管轄
原則的土地管轄が存在しない場合、債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が補充的土地管轄として認められます(破産法5条2項)。
一定の関係のある複数の債務者が同時に破産申立てをする場合
次の①~⑤について、いずれか一方の破産手続が係属中の場合、他方の破産手続について、先行する破産事件の裁判所に管轄が認められ、破産申立てをすることができます。
同時申立が認められる場合
①親会社と子会社、親会社と連結子会社(破産法5条3項~5項)
②法人と代表者(破産法5条6項)
③相互に連帯債務者の関係にある個人(破産法5条7項1号)
④相互に主たる債務者と保証人の関係にある個人(破産法5条7項2号)
⑤夫婦(破産法5条7項3号)
なお、①~⑤の場合、2つの破産申立てを同時に行うことも可能です。
具体例
破産の管轄の具体例③
債務者Aは、京都市内に居住しているが、大阪市内で事務所を構えて自営業を営んでいる。
債務者Aは、京都市内で同居している妻Bとともに、破産申立てを行う。
自営業者である債務者Aは、大阪地裁に破産申立てを行う必要があります。妻Bは、本来、大阪地裁に管轄はありません。しかし、夫のAと同時に、大阪地裁に破産申立てを行うことができます。
大規模事件の管轄
大規模事件については、次の2つの特則が規定されています。
大規模事件の管轄の特則
(1)破産債権となるべき債権を有する債権者数が500人以上:原則的土地管轄又は補充的土地管轄の管轄裁判所の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(破産法5条8項)
(2)破産債権となるべき債権を有する債権者数が1,000人以上:東京地方裁判所又は大阪地方裁判所(破産法5条9項)