自宅不動産に設定されている後順位抵当権を個人再生申立直前に抹消することに何か問題はありますか?
個人再生申立直前の後順位担保権の抹消
自宅不動産に住宅ローン以外の債務の担保が設定されている場合、再生計画案の認可決定までに、担保権を抹消しなければ、住宅資金特別条項は利用できません。
住特条項の要件は、以下の「個人再生と住宅資金特別条項」を参照
したがって、住特条項を利用するために、個人再生申立前に、後順位担保権を抹消することがあります。
第三者弁済による後順位担保権の抹消
個人再生申立直前に、親族などの第三者が後順位担保権者に弁済を行い、その担保権を抹消することがあります。
第三者弁済を行った場合、特に問題となることはないと考えられます。他の再生債権者との関係では、以下のように、第三者弁済によって、他の債権者が不利になることがないからです。
そもそも、後順位担保権をまかなえるだけの担保価値がない場合は、債権者が変更されたのと変わりません。後順位担保権をまかなえるだけの担保価値がある場合は、担保権が消滅することで、再生債務者の清算価値が上がることにつながります。
個人再生申立前に親族による援助で自宅不動産の抵当権を抹消し個人再生で自宅不動産を残した事例
法律事務所エソラで扱った個人再生の解決事例の一例を紹介します。 ①依頼者 依頼者は、自営業者兼法人の代表者です。事業のための借入が多額になったことから、債務整理を決意、自宅不動産を残すため、個人再生の申立てを希望されて […]
再生債務者自身の弁済による後順位担保権の抹消
個人再生申立直前に、再生債務者自身が、後順位担保権者に弁済を行い、その担保権を抹消させた場合、清算価値保障原則との関係で問題が生じます。
個人再生手続における再生計画に基づく弁済は、破産の場合と比較して、債権者に不利になってはならないという清算価値保障原則があります(民事再生法174条2項4号)。
後順位担保権をまかなえるだけの担保価値がある場合は、弁済により担保権が消滅し、その分、他の債権者の引き当てとなる財産が増加することになるので、清算価値は変わらないと考えられます。
しかし、後順位担保権をまかなえるだけの担保価値がない場合は、再生債務者による弁済は、破産手続において、否認権の対象となる行為です。
※破産手続における否認権参照
したがって、後順位担保権者に対する弁済分を清算価値に上乗せする必要があります。そのため、最低弁済額の金額が大幅に上がり、再生計画を履行できないという可能性が生じるおそれがあります。