破産手続における請負契約の処理


請負契約に関して、請負人が破産した場合に破産法53条の双方未履行の双務契約の規定(破産手続における双方未履行の双務契約参照)が適用されるか?を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁昭和62年11月26日判決

 請負契約における請負人が破産した場合に、破産法の53条の双方未履行の双務契約の規定が適用されるか?が争われた事案です。

事案の概要

 上告人は、昭和56年7月22日訴外会社との間で、上告人が訴外会社に対し、報酬総額2,100万円で一階鉄骨造、二階木造の事務所併用住宅の建築を請け負わせる旨の契約を締結した。

 上告人は、破産宣告前に訴外会社に対し、請負報酬の内金として合計1,600万円を支払った。

 訴外会社は昭和57年2月3日大阪地方裁判所において破産宣告を受け、被上告人が破産管財人に選任された。破産宣告当時、訴外会社及び上告人の双方がいまだ共に本件契約の履行を完了していなかった。

最高裁の判断

 最高裁は、請負契約の目的である仕事の性質が代替性がある場合は、破産法53条の双方未履行の双務契約の規定が適用されると判断しました。なお、本判決等時の破産法では59条となっていました。

 法59条(現行破産法53条)は、請負人が破産宣告を受けた場合であっても、当該請負契約の目的である仕事が破産者以外の者において完成することのできない性質のものであるため、破産管財人において破産者の債務の履行を選択する余地のないときでない限り、適用されるものと解するのが相当である。

 同条は、双務契約における双方の債務が、法律上及び経済上相互に関連性をもち、原則として互いに担保視しあっているものであることにかんがみ、双方未履行の双務契約の当事者の一方が破産した場合に、法60条と相まって、破産管財人に契約の解除をするか又は相手方の債務の履行を請求するかの選択権を認めることにより破産財団の利益を守ると同時に、破産管財人のした選択に対応した相手方の保護を図る趣旨の双務契約に関する通則であるところ、請負人が破産宣告を受けた場合に、請負契約につき法59条の適用を除外する旨の規定がないうえ、当該請負契約の目的である仕事の性質上破産管財人が破産者の債務の履行を選択する余地のないときでない限り、同条の適用を除外すべき実質的な理由もないからである。原判決が説示するように、同条の適用のない請負契約について法64条を適用することができ、その適正な運用によりある程度妥当な解決を図ることが可能であるとしても、破産財団の都合等により請負契約の目的である仕事を完成することができないときには、注文者の保護に欠けるところが大きいので、このことをもって法59条の適用を否定する根拠とすることはできないというべきである。


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