法律事務所エソラで扱った自己破産の解決事例の一例を紹介します。
事案の概要
ご依頼者は、30代の男性会社員で、約320万円の奨学金の返済を抱えていました。その後、うつ病を発症し、勤務先を休職することになりました。
休職中は、日用品の購入や飲食代の支払いなどにクレジットカードを利用することが増え、利用額が徐々に増加していきました。また、休職中に興味本位で競艇を始め、最終的に約320万円を競艇につぎ込みました。
その後、勤務先に復職しましたが、体調が安定せず、仕事を休むことが多かったため、給与が少ない状態が続きました。そのため、不足する生活費や借金の返済のために新たな借入れを繰り返し、借金が増加しました。
そんな中、うつ病が悪化して再び休職することになり、借金の返済を継続することが困難になりました。
最終的に、債権者9名に対する借金の総額は、奨学金約320万円を含めて約820万円となり、自己破産を申し立てることになりました。
問題点
今回の事例では、免責に関して、主に2つの問題がありました。
① 競艇による免責不許可事由
破産法252条1項4号は、浪費や賭博などによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合を免責不許可事由としています。
ご依頼者は、競艇に約320万円を費やしていたため、免責不許可事由に該当する可能性がありました。
免責不許可事由に該当するとしても、破産に至った経緯やその後の事情などを考慮して、裁判所の裁量によって免責が認められる場合があります。

免責不許可事由の浪費について詳細は、以下の記事参照
② 破産直前の借入れについて、詐術による信用取引との指摘
もう1つの問題は、破産申立て前の借入れでした。
ご依頼者は、弁護士が受任通知を発送する約1か月前に、ある債権者から借入れを行っていました。
この借入れについて、債権者から、借入れ後に一度も返済していないことなどを理由として、破産法252条1項5号の「詐術による信用取引」に該当するのではないかとの指摘がありました。
詐術による信用取引は、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、その事実がないと信じさせるために詐術を用いて借入れなどを行うことをいいます。
しかし、破産の直前に借入れを行い、一度も返済していないからといって、直ちに詐術による信用取引に該当するわけではありません。
借入れ当時の支払能力や債務者の認識、借入れの際に詐術が用いられたかなどが問題となります。

免責不許可事由の詐術による信用取引について詳しくは、以下の記事参照
弁護士の対応
① 借入れ当時の状況を踏まえ、詐術による信用取引には該当しないと主張
破産申立てに際して、問題となった借入れについて、以下の事情を主張しました。
借入れ当時は支払不能ではなかったこと
問題となった借入れを行った時点では、ご依頼者は休職前であり、会社員としての収入に加え、副業のアルバイトやスポットバイトも行っていました。
そのため、借入れ当時は客観的に支払不能ではなかった、又は少なくとも、ご依頼者自身は支払不能であると認識していなかったと主張しました。
借入れの際に積極的な欺罔行為を行っていないこと
また、ご依頼者は、借入れの際に返済能力などについて積極的に虚偽の説明をするような行為は行っていませんでした。
そこで、借入れ後に返済できず、短期間で弁護士が受任することになったとしても、そのことだけをもって詐術による信用取引には該当しないと主張しました。
② 競艇をやめ、生活再建に向けた準備を進めた
ご依頼者は、弁護士が受任する約半月前に競艇をやめていました。
競艇による多額の支出があったため、破産申立て後に裁判所から反省文の提出を求められることが予想されました。
そこで、破産申立て前から、ご依頼者に対し、競艇による借金を作ってしまったことへの反省や、今後の生活再建策を記載した反省文を作成できるよう、準備しておくことを指示しました。
破産申立て後、実際に裁判所から反省文の提出を求められたため、ご依頼者に反省文を作成してもらい、裁判所に提出しました。
また、申立時に、①競艇をしていた期間が短期間だったこと、②うつ病を抱えながら、本業以外に副業をして債務を返済しようとしていたこと、③早期に破産申立てを行いさらなる債務の増大を防いだことなどから免責が相当だと主張しました。
解決結果
破産申立ての結果、破産手続開始決定と同時に破産手続を廃止する決定(同時廃止)が出されました。また、免責に関して裁判所から追加で提出を求められたのは、生活再建策を含む反省文のみでした。
反省文を提出した後、免責審尋期日が指定されることもなく、免責許可決定が出されました。
今回の事例では、競艇による多額の支出や破産直前の借入れについて問題が指摘されていましたが、管財事件にはならず、同時廃止によって免責許可決定を得ることができました。
弁護士からのコメント
今回の事例は、競艇による免責不許可事由の問題に加えて、破産直前の借入れについても債権者から問題を指摘されていた点に特徴があります。
まず、競艇による借金があるからといって、必ず免責が認められなくなるわけではありません。借金が増加した経緯やギャンブルをやめた後の状況、生活再建に向けた取組みなども重要になります。
また、破産直前の借入れについても、借入れから短期間で返済不能になったという結果だけでなく、借入れ当時の収入状況や支払能力、本人の認識などを踏まえて検討する必要があります。
本件では、問題となった借入れについて、詐術による信用取引に該当しない旨を破産申立時に主張しました。
さらに、裁判所から反省文の提出を求められることを想定し、申立て前から準備を進めていました。
その結果、同時廃止となり、免責審尋のために裁判所に出頭することなく、免責許可決定を得ることができました。
ギャンブルによる借金や破産直前の借入れがある場合でも、それだけで自己破産を諦める必要はありません。
重要なのは、問題となる事情を隠さず、借金が増加した経緯や借入れ当時の状況を正確に説明し、今後の生活再建に向けて取り組むことです。

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